庭に色彩を植えるアーティスト。WHOLEが描く、新しい色の歴史

自然の色彩を日常の景色へ変える「WHOLE」。この春は、手編みのバスケットやエコプリントストールなどの限定アイテムをキナリノモール店にてご紹介しております。
WHOLE(ホウル)は、2014年にオレリア・ヴォルフ(Aurélia Wolff)によって立ち上げられたパリに拠点を置くテキスタイルブランドです。
植物染色のスペシャリストである彼女たちがつくるコレクションは、植物の根や茎、お花から丁寧に抽出された豊かな色彩が魅力。これまで赤ちゃんから大人の方まで、自然の息吹を感じるファブリックをたくさんお楽しみいただいてきました。
近年では、ルコックスポルティフとコラボレーションした限定スニーカーの生地染色や、ファッションブランドとのコラボレーション、そしてアーティストのタペストリー制作のためのウール染色を行うなど、芸術の分野へも活躍の幅を広げています。

WHOLE X Victoria Valette(エコプリント)
昨冬にはフランスの新聞「ル・モンド」のカルチャー誌が特集を組むほど、今パリで注目を集めているWHOLE。彼女たちのコレクションには、ただ美しいだけでなく、未来への意思が宿っているように感じています。
創設者のオレリアが、なぜ今、あえて手間のかかる「手仕事」と「植物染色」にこだわっているのか。その背景には、私たちが忘れかけていた色の歴史がありました。
週末のゆったり時間のおともに、ぜひご覧くださいませ。
自然の色彩を、日常の景色へ。WHOLEのテキスタイル

Photo by Abel Luval Ubach © 2025 WHOLE
WHOLE創設者のオレリア・ヴォルフ(Aurélia Wolff)は、テキスタイルデザイナーとしてファッション業界で働いたのち、WHOLEの前身となるエシカルファッション ブランド「Rosa tapioca」を立ち上げました。
きっかけは、デザイナーとしてデザインに関わることはできても、ものづくりの核となる部分・生地の生産工程に関わることができなかったということ。そこで、自分の色を創り出すことで既製のコレクションを豊かに彩りたいと、自身で植物由来の染料についての実験を始めたのだそうです。
植物染色の世界的専門家であるミシェル・ガルシア(Michel Garcia)氏に師事後、2014年に、より深く植物染色の魅力を表現する場として、ベビーキッズ・ホームファブリックに特化したテキスタイルブランド「WHOLE」をスタート。ブランド名には彼女の哲学が冠されています。

W astefree – 資源の無駄使いをやめること
H anddyed – ひとつづつ人の手を使って染めること
O rganic – 原料は全て天然のものを使うこと
L ocal – 地元の資源を見直し自社で製造すること
E co-friendly – 自然のサイクルに沿う生活スタイルを選ぶこと
最初はパリ11区に小さなアトリエショップを、その後13区に300㎡のガーデンを構え、そこで原料となる植物を育てたり、染料をつくったり、ワークショップを行っています。
現在チームは4人となり、オレリアはインド洋に浮かぶフランス海外県レユニオン島へ移住し、パリと2拠点で植物染色の魅力を広めています。

リソグラフ印刷の考えを生地へ落とし込んだ手織りのバスケットなど、今回ご紹介している限定アイテムは、このチームだからこそ生まれたとっておきのアートピースです。
170年前、私たちは「複雑な色」を置き忘れてきてしまった

ほんの170年ほど前までは、人びとが纏う服や着物などの繊維製品の色は、すべて植物や鉱物から届いたものだったということを知り驚きました。現在は植物染色(草木染め)と呼ばれるものです。
19世紀半ばの化学染料の誕生により、私たちは、安価で安定した色を手に入れます。そのおかげでたくさんの彩りが誰の日常にももたらされたことは言うまでもありませんが、たった170年で、季節や土地ごとに変化する「有機的な色」がすっかり影を潜めてしまいました。
オレリアは、工業化によって整いすぎた色の世界に、再び深みと命を吹き込もうとしています。彼女にとってWHOLEは、単なるブランドではなく、未来の色合いを想像しながら生きる哲学そのものです。

WHOLEでは、古くから伝わる染料抽出法により「自家製」で染料を作っています。
染料の材料は、水と少量の植物、そして鉱物添加物(ミョウバン、クエン酸、タンニン、鉄)。
原料となる植物は、地元や認定パートナーの供給元から仕入れた植物(フランス産の茜やパステル(藍の一種)、ログウッド、ルバーブなど)を使用しているほか、 地元のレストランやお庭から集めたアボカドの皮、にんじんの葉、アーティチョークの葉、コスモスの花、クルミの殻、ガルナッツなども使用しています。
WHOLEの染料は、フランスの繊維研究所IFTHでテスト済み。優れた耐水性と耐光性が証明されています。

黄色にはルバーブ、ピンクと赤にはセイヨウ茜、青には藍(パステル)、明るい黄色にはモクセイソウ、グレーにはガルナッツ。

パリの庭で「色彩を植える」ということ

彼女たちは「庭に色彩を植える」アーティストです。
300㎡のガーデンには、現在約100種の染料植物が植えられています。一見自由に生えているように見える植物たちですが、実際の配置は考え尽くされており、中央には色落ちしにくい植物、周囲にはビワやエルダーベリーなどの低木、そして少し先には薬用植物が植えられています。
自ら育てた草花から色を抽出する。
それは、その土地の記憶(テロワール)を布に定着させる行為です。その土地ならではの風土が織りなす色は、例えば同じ茜染めのピンクでも、日本の茜染めや、他の地域の茜染めの色とは全く異なる仕上がりです。

WHOLEのコレクションがアートと呼ばれる理由は、そこにある色が「作られたもの」ではなく、自然がその時々に見せてくれる「瞬間の記録」だからだと感じています。
春のうららかな陽ざしのなか。
パリの庭から届いた生きた色が、身のまわりを豊かな色彩で満たしてくれるはずです。
豊かな色彩を纏う、日常のアートピース

WHOLEのコレクションは、それぞれが世界にひとつのアートピースのような一枚です。
ただ製品が美しいだけでなく、そこには鮮やかな未来を願う意思が宿っているようにも。使うほどにゆっくりと風合いが変化し、美しく経年変化するテキスタイルをお届けします。
*このたびの限定コレクションは、キナリノモール店にてお選びいただけます。(リンク先はキナリノモール店へ遷移します)
– 自然の息吹を写した、絵画のようなエコプリントストール

軽やかなウールツイルのストールは、春の不安定な気温から優しく守ってくれる、纏うアートです。
インド洋に浮かぶレユニオン島の植物でエコプリントを施した、美しくユニークな、絵画のようなストールです。
「ecoprint(エコプリント)」とは、植物を布に押し当てて蒸し、形や色を直接転写する技法です。
使用したのは、タンニンを豊富に含んださまざまな葉っぱや植物たち。その多くは、染める日の朝にお庭で摘んだばかりの新鮮なもの。中には、アトリエへ向かう道すがら、街の中で拾い集めた植物たちも混ざっています。

カラー#1〜#7はシックで凛とした”コントラスト”
カラー#8〜#17はカラフルで鮮やかな”ヴィヴィッド”
どれも巻いていると水彩画のような模様に見えますが、広げるとレユニオン島の自然の恵みが散りばめられた姿に圧巻のひとことです。「植物の模様だったんだ!」と周りの方もきっと驚かれると思います。
– 色のゆらぎを愉しむ、スカーフとスヌード

化学染料では決して描けない、色のゆらぎ。
一色の中にも、光の加減でいくつもの表情が見え隠れするのが植物染色の魅力です。首元に無造作に巻くだけで、シンプルな装いに圧倒的な奥行きが生まれます。
– 溶け合う色と、踊る色。工芸品のような手織りのバスケット

こちらのバスケットは、伝統的な織物の概念を鮮やかに飛び越える、実験精神に満ちたアートピースです。
実用品としての「収納」を超えて、そこにあるだけでお部屋の空気が和らぐ存在感があります。
バスケットのサイズは、S・M・Lの3種類。
フランス産メリノウールの糸を植物染料で染め、その後自社のアンティークの織機を使い、バスケット用に特別にデザインされたパターンを織り上げました。
サイズによってパターンが異なり、植物染めの色彩を「平面」で表現したS・Lサイズ、「立体」へ構築したMサイズという2種類のアプローチで生地を織っています。
糸の重なりが描く、視覚の魔法「リソグラフ・テキスタイル」

S・Lサイズは、印刷の世界で愛されるリソグラフ印刷の技法をテキスタイルに落とし込むという(!)全く新しい試みです。
リソグラフ印刷(重ね刷り)は、インクが重なる部分の独特の風合いが人気の印刷技法です。こちらは、その質感を「糸の重なり」とともに織物で再現するという、なんともユニークな試みで表現されてます。

黄色と青の糸が交互に重なることで、遠目にはグリーンに見える「視覚的混合」が起きている様子がよく分かります。
白い経糸(たていと)の上に、リソグラフの版を重ねるように、色のついた緯糸(よこいと)を重ね合わせることで、視覚的な色の混ざり合いを生み出しています。
そこで新しく生まれたように見える色は、実は一種の錯覚。実際には生地の表面にその色の糸が存在しているわけではありません。
実際には存在しないはずの「第三の色」が浮かび上がる様子は、ぜひ実物でご覧いただきたいです!
春の光に踊る、タイルのようなパターン

こちらのバスケットは、糸を表面に浮かせる技法を用い色のついた糸をリズミカルに表面に出すことで、タイルのようなパターンを描いています。
近くで見ると植物染めの糸たちがダンスをしているようなリズムを感じ、遠くから眺めると、柔らかな色が溶け合うグラデーションに目を奪われます。
衣類やおもちゃなどの見せる収納として、またはお花やインテリアグリーンのポットカバーとして。裏地はオーガニックコットンの生地を使用し接着芯で補強されていますので、長く丈夫にお使いいただけます。

私たちの目から少しずつ遠ざかってしまった、重なり合う色彩の不思議。WHOLEはそれを、パリのお庭から私たちの元に届けてくれました。
自分への小さなご褒美として。
あるいは、大切な方へ「春」を贈る新生活ギフトとしても。
WHOLEのコレクションが、日々を鮮やかに彩ってくれる存在となりますと嬉しく思います。