WIENER WERKSTÄTTE CHRISTMAS CARDS

ちいさな紙の上に宿る、美の理想。ウィーン工房のクリスマスカード

 

Written By Ariana Martin

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Original article: WIENER WERKSTÄTTE CHRISTMAS CARDS
Japanese text by Ai Ota (ama)

前回の読みものでウィーン工房のテキスタイルについて綴りましたが、この季節にちなんで、オーストリア応用美術博物館(MAK)のコレクションに数多く収蔵されている、彼らのユニークで印象的なクリスマスカードのアーカイヴを見てみましょう。こんなに素敵なカードがポストに届いたら、きっと引き出しにしまうのが惜しくなってしまうはずです!

ポストカード No.19『メリー・クリスマス』フランツ・カール・デラヴィラ(Franz Karl Delavilla)デザイン(1907年)

 

ウィーン工房は、1903年に建築家ヨーゼフ・ホフマン(Josef Hoffmann)と画家のコロマン・モーザー(Koloman Moser)によって設立された、革新的な芸術家と職人たちの協働体でした。画家のクリムトを中心にオーストリアのウィーンで結成された芸術運動ウィーン分離派から派生した彼らは、絵画や彫刻のような鑑賞のための純粋美術(ファインアート)と、暮らしの中で実際に使用する応用美術(工芸やデザイン)のあいだにある境界線を取り払おうとしていました。

生活のすべてを美しく彩るというこの概念は「総合芸術 (Gesamtkunstwerk)」として知られ、この理念のもと、同工房は機能性と美しさを兼ね備えたあらゆる暮らしの道具を生み出しました。生産の大部分はウィーンのノイシュティフトガッセにある3階建ての建物で行われ、館内には陶芸、金属工芸、皮革工芸、製本、木工、さらには帽子製作のための設備まで備えられていました。

 

カール・クレネック(Carl Krenek)デザインのクリスマスカード2点(1909年頃)

 

総合芸術の精神を真に体現するため、ウィーン工房のスタジオでは、ポスターやポストカードといった身近な紙もの(エフェメラ)にもかなりの時間と情熱を注いでいました。才能あふれる数多のデザイナー陣と必要な印刷設備を擁していたため、自社のプロモーション資料も自前で手がけ、紙の上に自分たちのオリジナリティを刻み込んでいました(文字通り、すべての紙製品にあの象徴的なWWの刻印があしらわれていました)。

ウィーン工房のアーカイヴには、最も古いもので1905年にまで遡るクリスマスカードが保管されています。しかし、これらが販売されていたものか、あるいは知人や顧客へ季節の挨拶として送られたものなのかは定かではありません。1907年、彼らはポストカードに商業的な機会を見出し、ナンバリング付きのポストカードシリーズの制作を開始しました。これらは、優れたデザインを広く低コストで人々へ届ける手段として機能すると同時に、工房のミニチュア広告としての役割も果たすこととなります。

 

ルドルフ・カルヴァハ(Rudolf Kalvach)によるクリスマス・ポストカードのデザイン原画(1907年、ガッシュ)

 

カール・オットー・チェシュカ(Carl Otto Czeschka)によるクリスマスカードのデザイン原画(1905年、鉛筆・インク)

 

クリスマスカードをはじめとする季節のポストカードシリーズは、その後爆発的な人気を博し、ウィーン工房にとって最も商業的に成功したプロダクトのひとつとなりました。そのデザインは合計1,012種類にも及び、参加したデザイナーたちの多彩な個性を反映するように、グラフィックのスタイルも実に様々でした。

工房を代表するヨーゼフ・ホフマンやエゴン・シーレ(Egon Schiele)といった著名な芸術家たちがイラストを手掛ける一方で、あまり名を知られていない数多くの作家たちも制作に加わっていました。なかでも、マリア・リカルツ=シュトラウス(Maria Likarz-Strauss)、ヒルダ・イェッサー(Hilda Jesser)、メラ・ケーラー(Mela Koehler)といった女性デザイナーたちは、特に人気を集めた作品の数々を手がけました。厚手のブリストル紙にリトグラフで印刷されたポストカードの中には、ウィーンのカフェ文化を彩るモダンで洗練された女性たちの優雅な姿が描かれたものもあれば、思わずクスッとしてしまうような実にシュールで幻想的なものまで存在していました。

 

フリッツ・ツァイマー(Fritz Zeymer)によるポストカード No.303の表面と裏面(1910年)

当時のドイツ語筆記体で書かれているというこちらは、「23 XII.(12月23日)」と押された消印から、クリスマスイブ前日に出されたカードであることがわかります。「年末でバタバタと忙しくしているけれど、大切な方(マリーさん)へ一言だけでも温かい言葉を届けたい」という手紙の温もりが110年以上前のウィーンの日常からそのまま届いたような、なんとも愛おしい一枚です。

 

いまや世界中の定番となった、クリスマスカードを送り合う習慣。

その始まりは1860年代のイギリスに遡ります。印刷技術の発展に伴い人々が親しい人へカードを送り始めたことから広く普及し、1900年代初頭にはその習慣がヨーロッパ全土へ。ウィーン工房にとっても季節のカードは看板アイテムとなっていきました。

彼らのクリスマスカードには、雪景色や美しく飾り付けられたツリー、天使たちといった、いわゆるお馴染みのホリデーの情景が描かれています。しかし時折、ほんの少し妙で風変わりなモチーフが姿を現します。たとえば、クリスマスの悪魔クランプスや、暗い森の中でたった一人、本に顔をうずめる謎めいた男の姿(そして、その下には不釣り合いなほど陽気な「メリークリスマス!」というメッセージが添えられていたり)。

スタイルは多様であるものの、ウィーン分離派スタイルを象徴する大胆で装飾的なフレームやパターン要素によって、それらは一目でウィーン工房のものと分かります。背景や力強い輪郭線として黒インクが多く使われているのが特徴的で、これは同時代のドイツの木版画を思い起こさせます。

 

モーリツ・ユング(Moriz Jung)デザインのポストカード No.28(1907年)

 

ウーゴ・ゾヴェッティ(Ugo Zovetti)デザインのポストカード No.41(1907年)

 

現在、オリジナルのウィーン工房のポストカードは非常に人気が高く、オークションでは高額で取引されるほどの貴重な美術品となっています。しかし、当時の人々にとっては、日常を美しく彩る身近な贈り物だったことは言うまでもありません。

 

Images held in the MAK (Museum of Applied Arts) collections

画像所蔵:オーストリア応用美術博物館(MAK, Vienna)

 


 

一年でいちばんすてきなこの季節に。
暮らしの中へ、
美しい言葉の贈り物を。

 

 

既存の垣根をなくし、ただ純粋に「日常を美しく彩りたい」と願ったウィーン工房。彼らにとってクリスマスカードは、単なる商業印刷物ではなく、一枚の小さな紙の上であふれるアイデアと才能を自由に表現できる、最も開かれた身近なキャンバスだったのではないでしょうか。

手軽で便利な道具やもの、言葉までもが簡単に手に入る現代だからこそ。

かつてのデザイナーたちが情熱や美の理想をぎゅっと閉じ込めたように、物語のあるクリスマスカードへ自分の言葉をのせて、大切な方へ贈ってみませんか?お気に入りのカードを選び、お相手のお顔を思い浮かべながら言葉を紡ぐ。それはたとえたった一言であったとしても、お相手にとっては最高のプレゼントになるはずです。

100年前のウィーンの街角で人々が胸を躍らせていたあの光景と同じように。

一枚のクリスマスカードが、皆さまと大切な方々の冬の時間を、じんわりと温めてくれますと嬉しく思います。

 

クリスマスカードをえらぶ

 

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