クリエイティブとブランドのキャリアについてのポッドキャスト「Gouwe Klauwen」。

ホストは Margriet Meijer 。アムステルダムに拠点を置くレザーバッグのアトリエ Monsak のオーナー、そしてメーカーやデザイナーのコーチングも行なっています。このポッドキャストでは、メーカーの方々とブランドの裏側について話し対話を通して「ブランドの魂」を紐解きます。 

 

 

※本ページの内容は要約です

 

 

Margriet

今回のエピソードゲストは、ユリアン・マターです。

子どもの頃より美しいものを発明したいと思っていたユリアンが自身のデザインスタジオを立ち上げたのは、44歳のときでした。 彼女は紙とテキスタイルへの愛情を、詩的なタッチで表現しています。そして、彼女のコレクションでは、自然がとても大きな役割を担っています。

彼女の最新のデザインであるお花の形をしたグリーティングカードは、中に隠されたメッセージを紐解く、とても美しいカードです。 

お花を水に浮かべたとき。 YouTubeを見ましたが、とても不思議でした!

(動画はこちら。ぜひご覧ください)

 

Jurianne

素敵な場所にお招きいただきありがとうございます。

よく晴れたいい日に、居心地の良いスタジオに来ることができて嬉しいです。

 

Margriet

ようこそいらっしゃいました!

以前友人の誕生日パーティーに参加したときに、彼女のお家に素敵な花束が飾ってあるのを見て「とてもクールな花束だ!」と思いました。そう、それはあなたの紙のお花でした。

あなたがアルテミスを首席で卒業してから現在に至るまで、これまでの道のりがどのようなものであったのかを、私たちに話してくださいませんか?

 

Jurianne

私のビジネスは、常に美しさ、自由、たくさんのものを求めて、ボートで漂っています。 

今いる場所までの航海についてお話します。

 

私はアムステルダム大学で学び映画業界で働いたりもしていましたが、ある時、アルテミスアカデミー(スタイリング、アートディレクション、トレンド予測などのクリエイティブを学ぶアカデミー)のまったく新しいトレーニングコースの広告を見ました。 

それはスタイリングコースでした。

それを見て「これだ!これは私がやろうとしていることだ!」と思い、私はそこで学び始めました。

20人いた同級生は、2年後には10人だけになっていました。そして先生は私たちに「あなたたち10人は、ヨーロッパで最初の公式インテリア スタイリストだ!」と言ったのを覚えています。

 

私はアルテミスの3人の同級生と一緒に、イベントに関わる会社を立ち上げました。

当時はパーティーデコレーションの分野には全く何もなかったので、私たちが提案するパーティーの飾りは非常に美しく、真新しいものでした。企業と一緒に大きなプロジェクトを行ったりもしましたが、残念ながら私たちは別々の道を歩むことになりました。

 

ちょうど私には赤ちゃんが生まれたばかりで、そうだ、テーブルにパンがなければいけないと思い、縁あってアムステルダム警察署で働くことになりました。 

私はそこで深刻な環境犯罪を担当していました。警察の尋問を手伝い、投棄された有毒廃棄物のデータベースを設計しました。そこでの仕事は充実しており素晴らしい時間を過ごしましたが、それは私の本当の意味での情熱ではありませんでした。

 

2年間その仕事を続けた頃、2人目の赤ちゃんが産まれ、その後はIKEAでスタイリストを6年間続けました。

私はアムステルダムのIKEAショールームのスタイリストで、そこでの時間はとても充実しており仲間にも恵まれ面白いものでした。 

しかし、私の気持ちが100%そこに属していないことをいつも歯痒く感じていました。私は自由を愛しています。組織に属するというのはそういうものかもしれませんが、私はいつも一種のジャーナリストのような立場で、少し遠くから眺めていました。

7年以上勤めていたら、おそらくIKEAを辞めることはなかったでしょう。

 

そして私は自分のビジネスを始めました。 

 

アイデアはたくさんありました。私はすでにたくさんのものを作っていましたが、特に紙から何かを作ることが好きでした。 かつて誕生日に立派なプリンターをプレゼントされたことがあり、それはトナーを消費するだけのレーザープリンターでしたが、これが役立つ時がきました。 

この頃私たちはアムステルダムからブッスム(現在の拠点)に引っ越しました。 

そして、私の夫が重大なバイク事故にあい、その結果、働くことができなくなりました。さらにその時期悲しみが重なります。私の親友と彼女の母親が、タイの津波で命を落としました。それは私にとって言葉にできないほどの強烈な出来事でした。本当に…強烈でした…

1年後の彼女たちの命日、私たちは南フランスの家族の家にいました。彼女たちを偲ぶため、どうやって想いを馳せようかと話していたところ、末の息子が「お母さん、津波…水…ボートに乗ろうか?」と言いました。 私は、まあ、それはいいアイデアね。明日の朝、川にボートを流しましょうと言い、それから私たちはボートを準備しました。ボートの手すり部分に薄いガイドを引き、メッセージを書きました。

 

親友と、彼女の母親のすべての思い出が詰まったボート。

 

ボートは出航していき、私は「これは製品になる」と思いました。

ただ、それはお金になるということではなく、"これを世の中に共有する必要がある"と思ったのです。それから少し時間はかかりましたが、その種は蒔かれ、現在のフローティングボートになりました。

これが「Jurianne Matter」の出発点です。

 

Margriet

私も、あなたのボートには何か想いが乗っていると感じています。それからどうやって製品化したのですか?

 

Jurianne

さあ!と思って銀行に行きました。そこで笑われました。なぜなら、私のボートにはソーラーパネルもギミックも何も付いていなかったからです。上質なジャケットに身を包んだバンカーたちと何人会ったことでしょう…時には涙を浮かべました。そうこうしているうちに、私たちの願いの船が出航することになったのです!

最初は簡素な袋に入っていて、FSCではない紙でした。2,000セットか4,000セット作ったと記憶しています。

ようやくブランドとしてのスタートラインに立ったところで、あっ!FSC認証紙がある、ということに気がつきました。私は自分が生み出すもので地球に負担をかけたくありません。

インクには植物由来のものを選びました。当時の原価だと6セント、現在では16セント程度追加費用がかかり、すごいな、余計な手間がかかるんだな〜と思いましたが、かなりいい製品ができあがったので満足でした。

 

 

「美しいこと」について

 

 

Margriet

あなたは、美しいものへの愛、美しいものを作ること、そしてそれは必ずしも実用的である必要はない、とも話されていますね。

 

Jurianne

そうですね、それは私のジレンマです。もっと実用的なものもデザインしたいという気持ちもありますが…美しいものは締めくくりのようなものだといつも感じています。

私の父は音楽家で、音楽院で教えていました。彼とはいつも「10代の頃はお父さんの音楽は生活必需品じゃなかった。」と話していました。笑

私にとっては、美しいものに囲まれることが人生において必要であると考えています。なぜなら、美しいものは私をより幸せな人間にしてくれ、私に栄養を与え、その結果仕事で世の中のために寄り添うことができるからです。 

ですから、私にとって美しいものは生きていくための燃料なのですが、私自身クリエイティブな人間でありそれをよく理解しているので、このように言葉で表現できると思いますが、多くの人は必ずしもその事柄に気づいていないと思います。それがなくなるまで。 

 

私は、言語が異なる人でも感じたり、理解したり、取り入れたりできるように、作品を通して感情や感覚を可視化することができる製品づくりを心がけています。

 

何かをゼロから作れば、その製品に美しさを与えるチャンスがさらに多くなります。そして、私は自分のコレクションにおいて、サンプルを使ってそれを徹底的に行います。サンプルづくりは、誠意と愛と情熱を持って、私が一番力を注ぐところです。 

美しさはもちろん、誰でも不安なく楽しんで形にできることが重要だと考えています。

彼らは自分で紙のお花をつくりたいと思っても、一から完全にお花を設計したいとは思っていません。ワイヤーの長さを決めて、パーツに折り目をつけて組み立てるだけの紙のお花のDIYキットのパッケージがあれば、彼らは自分で満足感を持って花束をつくることができます。

"何かを自分で作った"という体験は日常を彩るうえで大切なことだと思うのです。日々あっという間に過ぎてゆく日常の中で、人々がほんの少しの間立ち止まり、自分自身と向き合い、自分でつくったものを通して、自身と身の回りも愛でることができたらいいですよね。

「美しいもの」を通して生きる喜び、あるいは生活に彩りを与えられることが大切だと思うので、私たちの製品は必需品ではないけれど、世の中にとっては、本当の意味で重要な仕事をしていると思っています。

これを聞いているあなたも、私と同じように感じてくださっていれば嬉しいです。

 

 

クリエイティブと情熱

 

 

Margriet

最近Instagramの存在が楽しくも私をとても忙しくさせているんです。あなたはそれについてどう感じていますか?あなたが2008年にブランドを始めた頃は、まだInstagramはなかったと思います。

 

Jurianne

Instagramは"注目"の経済ですよね。

あらゆる映像、あらゆる音、そしてたまの静けさ。

メーカーは、商業目的で本当に良いものを作りたいと思っていると思います。 しかし、私は最近その注目を更新し続けることに自分が少々プレッシャーを感じているということに気がつきました。Instagramを始めたころはアルゴリズムや広告はまだそこにはなく、ジョギングの様子や美しいものを共有する、単なる通常のタイムラインでした。そこに戻りたいという気持ちもあります。とはいえ、今はストーリーズで旅の美しい風景を共有したりすることを心から楽しんでいます!

 

Margriet

Monsakでも、何年もかけてパーソナル・ブランドを確立しました。毎週月曜日の朝、4年連続でビデオを撮ったと記憶しています。

それによって顧客を獲得できることを期待し、常に注目をもたらさなければならないと感じることは分かります。今はそれを支えてくれる素晴らしい同僚もいます。しかし、私の顔が見えなくなったら、人々は離れていってしまいます。 素晴らしいソーシャルメディアでありプラットフォームですが、あなたの仰ることも理解できます。 

 

Jurianne

今後はニュースレターをもう少し楽しいものにしたいと思っています。私のウェブサイトを訪れてくれた顧客に直接届けられる電子メールは間違いなく素晴らしいツールであり、もっと可能性があると思っています。Pinterestへも、しばらく行っていなかったことに気がつきました。ムードボードなどに必要です。 

幸いなことに、私の周りには素晴らしいアシスタントのキムと、よく話す、良いつながりを持っているメーカー仲間が何人かいます。私は起業家精神を選択したのですから、舵は自分できらなければなりません。いい方向へすすんでいると確信しています。

 

Margriet

そういった仲間の存在は本当に心強いですよね。私は、自分の情熱を失うことについていつも話しています。あなたは仕事への情熱を失って悩んだことはありますか?

 

Jurianne

ええ、もちろんそういうこともあります。

数ヶ月後に展示会が控えているのに、まだ新製品のアイデアがない…ああ、助けて!みたいな。完全に道に迷ってしまい、情熱の火が消えてしまいます。

しかし、そんな時は何もせず、ただ自然の中をひたすら歩きすべてをスポンジのように吸収するという素晴らしい技も見つけました。頭を空っぽにして歩き、ふと感じたこと、すべてを受け入れるんです。

前回もそうでした。その日家の近くの国立公園をただひたすらに歩いていました。「このような製品を作らなければならない」と思っていたのが「本当にそうなのか?いや、そうではない」と感じた瞬間、突然全く新しいアイデアを思いつきました。私の心はスキップし、鼓動が高鳴りました。

ですから、1日、2日、あるいはそれ以上、完全に空っぽの状態で体力を消耗することはとても重要なんだと思います。

その時思いついたアイデアは現在進行中です。

この冬の新しいデザインは、私にとって初めての試みです。しかもオランダでもインドでもなく、全く違う国でつくられています。私が思い描いたものをつくってくれるアトリエを探すところから始まりました。(結果、最高のアトリエに巡り会えました!)アイデアを思いついたはいいけれど、最初はできるかな?本当に製品になるかな?とも思いました。しかし、ワクワク感が勝りました。このアイデアを考えているととても楽しいのです。

最近読んだ本にこんな名言がありました。

"読みたい本は自分で書かなければなりません"  

私の新しいデザインは秋にお披露目予定です。お店に並ぶ日が、今から楽しみでなりません。

 

 

今後の展望について

 

 

Margriet

私は、自身のブランドMonsakを始めてから、自分自身を知り、物事をクリアにすることが起業家精神に大きな効果があることに気づきました。そして繊細な感性を持つ作り手や、起業家の女性たちの力になりたいとビジネスコーチの勉強をして今に至ります。ブランドを始めた頃には思いもよらなかったことで、何かに導かれてこの場所にいるとも感じています。

あなたにはそういった経験はありますか?

 

Jurianne

ええ、実は自分の中で考えていることがあります。

私は先日、今までに生み出したデザインをすべて見返してみました。製品になったもの、ならなかったけど気に入っているもの、複雑すぎるもの、あまり好きではないもの(私は自分自身の仕事にとても厳しいのです)何であれ、それらはすべてまだそこにあります。そしてその中には、埃をかぶらせておくには惜しいデザインがたくさんあります。

現在、ライセンスなどについて調べており、今はまだかなり漠然としていますが、新しい仕事のやり方の計画を立てているところです。

私は在宅勤務が大好きです。

現在、私は湿原のほとりに佇む小さな家に住んでおり、「himli」と名付けた素敵なスタジオも構えています。

ロックダウンをきっかけに「とても大きなスタジオを作ろう、そうすれば、自分で撮影することもできるし、写真スタジオとして貸し出すこともできる。」とリノベーションできる理想の物件を探していました。

私たちはアムステルダムから車で15分の位置にあるナールデンのどこかを不動産屋さんの車で走っていました。その時私は「ちょっとここを左に行ってください」と言いました。不思議な通り。ちょっと覗いてみたくなったのです。それで、ある建物が目に入って、ああいうのがいいなと思ったんです。

窓から中を覗くと、カーペットに汚れた天井。そして傾斜したガラス張りの屋根。

傍にはなんと賃貸のポスターが貼ってあるではありませんか!すぐにそこに書いてあった番号へ電話しました。それから中へ入って瞑想していると、ここが私たちの居場所だと感じました。そして、大家さん、私たちを選んで!とも強く願いました。なぜならこの場所を望む人が私たちの他にもいたから。

その後、そこはまさに私たちの現在の居場所になりました。管理は夫のピーターに引き継がれ、柔らかな自然光の入るスタジオは、デンマークのフェロー諸島で話されている言語で天国を意味する「himli」と名付けられました。大きなドアが2つあって、すべてをスライドさせて広い空間にすることができます。刺激的な場所ではないけれど、文字通り天国のような心地よい空間です。

私は8時半から6時までのあいだ、PCの前に座って「ここにいるよ」という感じで仕事をしています。しかし、この自分のパターンからもう少し離れて生き始めたいとも思っています。

 

Margriet

Monsakでも写真撮影をしたことがありますが、とても素敵な空間でした。今日は素晴らしい時間をありがとうございました!最後に、皆さまにメッセージはありますか?

 

Jurianne

本当に心の底から「やらなきゃ」と思ったときには、どんな事でも恐れずに、とにかくやってみてください。

誰もが恐れています。恐れていない人を私は知らない。

私はバーニングマンで、アイアンワイヤーで作られた2人の大人が背中合わせに座り、2人の子どもが手を取り合っているとても美しい写真を見ました。大人はお互いに背を向けているのに、内側では子どもたちが見つめ合い、手をつないでいる。だから、私たちはみんな心の中では触れ合いたいと思っているんだ、ということがよくわかる素晴らしい作品だと思います。

https://milova.net/love

そう、怖くてもとにかくやってみる。うまく言えないけど、あなたの心の中に生き続けているあの小さな子どものような、素直な気持ちに従って。勇気を出して行動に移してみてください!

 

 


 

 

最後までお読みいただきありがとうございました。

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